ビカクシダの胞子葉の葉先が茶色くカサカサになる原因は、ほぼ「乾燥」です。 空気の乾燥、株の水切れ、葉焼け、水苔の塩類蓄積——この4つのどれかで、いずれも組織が水分を失って壊死した跡です。一度茶色くなった部分が緑に戻ることはありませんが、原因を直せば新しく展開する葉はきれいに伸びます。

最初に、ひとつだけ切り分けておきます。茶色くなっているのが**株元の丸い葉(貯水葉)**であれば、この記事の話ではありません。貯水葉が茶色く硬くなるのは正常な老化で、切らずに残すのが正解です(貯水葉が茶色くなる原因を参照)。この記事が扱うのは、鹿の角状に伸びる胞子葉の、葉先です。コウモリランという名前で育てている方も同じ植物なので、内容は共通です。

ビカクシダの葉先が茶色くなる原因は?(判定表)

症状の出方で原因がかなり絞れます。

症状主な原因対処
葉先だけがパリパリに乾いて茶色、株全体は元気空気の乾燥湿度を上げる。風を直接当てない
葉先が茶色く、葉全体に張りがない・垂れている水切れ(根まで届いていない)浸す水やりに変える
葉の広い面に白〜茶の抜けた斑、日当たりの強い側だけ葉焼け遮光する。直射を外す
葉先が茶色く、水苔の表面に白い粉や結晶塩類(肥料・水道水)の蓄積大量の水で洗い流す
茶色い斑点が点々と出る(葉先ではなく面)病害・害虫別原因。下記参照
株元が黒くぶよぶよ、匂いもある根腐れ根腐れの対処

判定に迷ったら、株元を持って重さを見てください。 いつまでも重く湿っているなら過湿側、軽く乾いているなら乾燥側です。葉先の茶色は、ほとんどが後者です。

原因1:空気の乾燥(エアコンと暖房)

日本の室内栽培でいちばん多い原因です。ビカクシダの自生地は湿度の高い森の中で、目安として50〜70%を好みます。ところが、冷房の効いた夏の室内と、暖房を入れた冬の室内は、どちらも湿度が30〜40%まで落ちます。

特に問題なのは、湿度そのものより風が直接当たることです。エアコンの吹き出し口の正面に吊るした株は、常に乾いた風にさらされて葉先から乾いていきます。同じ場所はハダニの温床でもあるので、まず置き場所を風の当たらない位置へ動かしてください。

湿度を上げる方法は、加湿器を近くで運転する、株をまとめて置く、水を張ったトレイの上に置く(株を水に浸けない)、といったところです。葉水は湿度の補助にはなりますが、これ単独で乾燥は解決しません。

原因2:水切れ ——「かけているのに届いていない」

板付けで最も多い失敗がこれです。上から水をかけると、水は葉と水苔の表面を伝って板の外へ流れ落ち、内部の根の塊にはほとんど届きません。 毎週きちんと水やりしているつもりで、実際には何か月も水切れが続いている、というケースがよくあります。

板付けの水やりは「かける」のではなく「浸す」のが基本です。バケツや洗面器に水を張り、株ごと20〜30分沈めて、水苔全体に水を吸わせてから引き上げます。手順と頻度の決め方は水やりの頻度にまとめてあります。

水切れが進むと、葉先の茶変だけでなく葉全体が垂れて張りを失います。ここまで来ていても、浸水を数回繰り返せば戻ることが多いです。

原因3:直射日光と高温による葉焼け

葉先ではなく葉の広い面に、白っぽく色の抜けた斑や乾いた茶色の斑が出て、それが日当たりの強い側に偏っている場合は葉焼けです。夏に窓際へ移動させた直後、屋外へ出した直後によく起きます。

ビカクシダが好むのは明るい日陰(レースカーテン越し、東向きの窓際など)です。特に銀葉系(ビーチー、ウィリンキーなど)は星状毛が水滴をためやすく、日中の葉水がレンズのように働いて焼けることがあります。葉水は朝夕に行ってください。適切な光量の目安は置き場所と光にあります。

原因4:水苔の塩類蓄積

液肥を規定より濃く与えている、あるいは薄くても長期間与え続けていると、水苔に肥料成分が塩類として蓄積します。塩類は根から水を奪う方向に働くため、水やりをしていても株は乾燥状態になり、その症状が葉先に出ます。水道水のミネラル分でも、数か月かけて同じことが起きます。

サインは、水苔の表面やプラ鉢の縁に白い粉や結晶が見えることです。対処は簡単で、月に1回、大量の水を上から流してよく洗い流します(この時だけは「かける」水やりが正解です)。そのうえで液肥の濃度を規定の半分程度に落としてください(肥料の与え方)。

茶色い葉先は切っていいですか?

胞子葉であれば切って構いません。 貯水葉と違い、胞子葉の枯れた部分を整えても株にダメージはありません。清潔なハサミで、茶色い組織の少し内側ではなく少し外側を残して切ると、切り口がまた茶色くなっても目立ちにくくなります。葉の形に沿って斜めに切ると自然に見えます。

ただし、次の2点は押さえてください。

  1. 切っても原因は消えません。 乾燥や水切れをそのままにすれば、新しく伸びた葉先がまた茶色くなります。切るのは見た目の処理であって、対処ではありません。
  2. 葉全体が茶色い場合は、付け根から切らずに残す。 まだ株が養分を回収している途中のことがあります。完全に乾いて縮れてから外してください。

茶色い「斑点」が出ている場合は別の原因

葉先から進む茶変ではなく、葉の面に点々と茶色い斑点が出ている場合は、乾燥ではありません。カイガラムシの吸汁跡、ハダニによるカスリ状の退色、あるいは細菌・糸状菌による病斑の可能性があります。葉の裏を確認して、動かない茶色い粒が付いていればカイガラムシ、白っぽいカスリ状で細い糸が見えればハダニです。どちらでもない場合は虫対策ガイドで切り分けてください。

葉先ではなく葉全体が黄色くなっていく場合も別の原因で、多くは水のやりすぎです。葉が黄色くなる原因を参照してください。

予防チェックリスト

  • エアコン・暖房の風が直接当たる場所に吊るさない
  • 冬と真夏は湿度40%を下回らないようにする
  • 板付けは「かける」ではなく「浸す」水やりにする
  • 直射日光は避け、明るい日陰に置く
  • 液肥は規定の半分程度の濃度にする
  • 月1回、大量の水で水苔を洗い流して塩類を抜く

葉先の茶変は、株が枯れるサインではありません。ほとんどの場合、置き場所と水やりの方法を変えるだけで、次に展開する葉はきれいに伸びます。Platycerium の栽培環境についてはウィスコンシン大学園芸普及部の解説も参考になります。丈夫で葉先が傷みにくい種から始めたい方には、ビカクシダ・ビフルカツムがおすすめです。