ビカクシダが黄色くなる、株元が黒ずむ、柔らかくなる。こうした症状の原因でいちばん多いのが、水のやりすぎ(過湿)です。 やっかいなのは、見た目が水不足とよく似ていることです。しおれた葉を見て水を足し、かえって弱らせてしまうのが典型的な失敗パターンです。

この記事では、ビカクシダ(コウモリラン)の水のやりすぎで出る6つのサイン、水不足との見分け方、気づいたときの立て直し方、そして秋冬に過湿を防ぐ水やりのコツを説明します。すでに株元がぶよぶよしている場合は、根腐れの症状と復活のさせ方もあわせて確認してください。

なぜビカクシダは水のやりすぎに弱いのか

ビカクシダは土に植わる植物ではなく、自生地では樹木の幹や枝に張り付いて育つ着生植物です。根は雨のあとに素早く水を吸い、すぐに乾いた空気に触れる環境に適応しています。水苔がいつまでも湿ったままだと、根は酸素が足りずに傷み、そこから腐敗が始まります。

日本で水のやりすぎが起きやすい時期は2つあります。ひとつは梅雨から夏で、湿度が高く夜も気温が下がらないため、水苔が乾きにくく菌も増えやすくなります。もうひとつは秋から冬です。気温が下がって成長が止まると、株はほとんど水を吸わなくなりますが、夏の習慣のまま水をやり続けると、水苔が乾く間もなく次の水が入ります。10月から11月は、ちょうどこの切り替えが必要な時期です。

水のやりすぎのサイン6つ

次のサインが同時にいくつも出ているほど、事態は深刻です。

#サイン見た目
1胞子葉が黄色くなる葉先だけでなく、葉全体が均一に薄く黄色くなる
2株元から黒く柔らかく傷む胞子葉の付け根や貯水葉との境目から、茶色〜黒い部分が外へ広がる
3貯水葉がぶよぶよ乾いて硬いはずの貯水葉が、柔らかく湿っている
4酸っぱい・沼のような匂い株元に鼻を近づけると不快な匂いがする。最も確実なサインのひとつ
5水苔が乾かない水やりから4〜5日たっても、水苔や鉢の中が湿ったまま
6黄色い縁取りのある黒い斑点葉の上に水分が長く残って起きる、カビによる斑点

ひとつ注意したいのは、古い貯水葉が茶色くなるのは正常だということです。貯水葉は時間とともに茶色く硬くなり、乾いた状態で根茎を守り続けます。乾いていて硬ければ問題ありません。見分け方は貯水葉が茶色くなる原因で詳しく説明しています。葉の黄変にほかの原因がないか確認したい場合は葉が黄色くなる原因、黒い斑点の見分け方はビカクシダの黒い斑点を参照してください。

水のやりすぎと水不足の見分け方

どちらも葉が茶色くなったりしおれたりするので混同されがちですが、傷み方の質と場所がはっきり違います。水やりの前に、この表で確認してください。

手がかり水のやりすぎ水不足
葉の質感柔らかい、しんなり、ぶよぶよパリパリ、乾いて割れやすい
傷みの始まり株元から上へ葉先と縁から
傷みの色濃い茶色〜黒薄い茶色、紙のよう
匂い酸っぱい、カビ臭いなし
株の重さずっしり重い驚くほど軽い
全体の様子黄色くなり、黒ずむしおれて、縮れる

水不足だった場合の対処は逆で、バケツに20〜30分沈めて水苔の芯まで吸わせます。季節ごとの適切な間隔はビカクシダの水やり頻度、葉先のパリパリが気になる場合は葉先が茶色くなる原因にまとめています。

水をやりすぎたビカクシダの立て直し方

サインに気づいたら、すぐに動いてください。「湿りすぎ」から「根腐れ」までの時間は、暖かい時期ほど短くなります。

  1. 水やりをすぐに止める。 水苔が芯まで完全に乾くまで、次の水はやりません。1週間以上かかることもあります。葉水もいったん止めます。
  2. 明るく風の通る場所へ移す。 明るい間接光と、サーキュレーターの弱風や窓を開けた換気で株元を乾かします。真夏の強い直射は弱った株に葉焼けや暑さのダメージを重ねるので避けてください。冬は暖房の効いた明るい部屋に置きますが、温風が直接当たる場所は避けます。
  3. 傷んだ組織を取り除く。 柔らかく黒くなった胞子葉は、消毒した刃で健康な部分まで切り取ります。切り口はきれいに治りますが、腐った部分を残すと広がります。貯水葉は切りません。
  4. 株元と根を確認する。 貯水葉の付け根が柔らかく、酸っぱい匂いがするなら、すでに根腐れです。根腐れの復活手順に従って板から外し、切り戻してください。
  5. 水苔が傷んでいれば交換する。 何年も使って崩れた水苔は、スポンジのように水を抱え込んで乾きません。新しい水苔でふんわり付け直すと、水はけが戻ります。付け直しの手順はビカクシダの板付けのやり方にあります。ただし冬の付け直しは株の負担が大きいので、根腐れでなければ春まで待つのが無難です。

ビカクシダは根が少ない着生植物なので、普通の観葉植物より根のダメージから回復しやすい植物です。早めに気づけば、ほとんどの株は持ち直します。

水のやりすぎを防ぐコツ

  • 日数ではなく、重さと乾き具合で決める。 株を持ち上げて軽く、水苔の表面を指で押して乾いていたら水やりのタイミングです。目安は春夏で7日前後、秋冬で12〜14日に1回ですが、部屋によって大きく変わります。
  • 午前中に与える。 夜までに葉と水苔の表面が乾くよう、水やりは朝から昼前に。冬は特に、夕方の水やりで冷えた夜を迎えないようにします。
  • 湿度より風。 加湿を増やすより、空気を動かすほうが効果があります。止まった湿った空気は、カビがいちばん好む環境です。
  • 受け皿に水を溜めない。 鉢植えは受け皿の水を必ず捨てます。板付けはソーキングのあとよく水を切ってから掛け直します。
  • 光が少ない場所ほど水を減らす。 暗い場所の株は水を使う量が少なく、乾くのも遅いので、水やりの回数は少なくて済みます。置き場所と光の関係はビカクシダの置き場所と日照、室内での管理全体はビカクシダの室内での育て方にまとめています。
  • 秋は早めに間隔を空ける。 最低気温が15℃を切り始めたら、水やりの間隔を夏より長くします。冬の水やりの詳しい考え方はビカクシダの冬越しを参照してください。

品種によっても水の好みは少し違います。乾燥に強いビーチーはやや乾かし気味、湿度を好むリドレイは乾かしすぎに注意が必要です。迷ったときは「少し待つ」が正解です。ビカクシダは、少し乾きすぎるほうが、少し湿りすぎるよりずっと耐えられます。

水のやりすぎの多くは「前回いつやったか」を覚えていないことから始まります。ビカクログでは株ごとのお世話記録に水やりの日を残せるので、次のタイミングを判断する目安になります。