ビカクシダは室内でも十分に育ちます。条件は「明るい窓際(なければ植物育成ライト)」「水苔が乾いてからの水やり」「ゆるく動く空気」の3つです。 室内で枯れる原因のほとんどは、光不足、日数で決めた水のやりすぎ、そしてエアコンや暖房の風です。
ビカクシダ(コウモリラン)は、日本ではインテリアグリーンとして室内で育てている人がいちばん多い植物のひとつです。ただ、本来は樹木に着生して、明るい木漏れ日と風の中で育つ植物なので、部屋に掛けておくだけでは調子を崩します。この記事では、室内での置き場所、季節ごとの水やり、エアコン・暖房・サーキュレーターとの付き合い方、室内で起きやすいトラブルを順に説明します。これから冬に向けて屋外の株を取り込む人は、ビカクシダの冬越しもあわせて読んでください。
室内管理の要点
| 項目 | 室内での目安 |
|---|---|
| 光 | 東向きの窓辺がベスト。南・西窓はレースカーテン越しか1〜1.5m離す |
| 水やり | 春夏は7日前後、秋冬は12〜14日に1回が目安。日数より水苔の乾きと株の重さで判断 |
| 湿度 | 50%以上が理想。冷暖房中は30〜40%まで下がるので朝の葉水で補う |
| 温度 | 生育に向くのは18〜27℃。10℃を下回ると成長が止まる |
| 風 | サーキュレーターで部屋の空気をゆるく動かす。エアコンの風は直接当てない |
| 肥料 | 春〜初秋だけ、薄めた液肥を2〜4週に1回。冬は与えない |
屋外と比べると、室内は成長がゆっくりで葉も小ぶりになりますが、夏の葉焼けや冬の霜の心配がありません。光と水やりさえ合わせれば、室内のほうが長く安定して育てられることも多いです。
置き場所:いちばん大事なのは光
室内でビカクシダが調子を崩す原因の第1位は、光不足です。人の目には明るく見える部屋の奥でも、植物にとっては窓際の数分の一の明るさしかありません。
| 置き場所 | 向いているか |
|---|---|
| 東向きの窓辺 | ◎ 朝のやわらかい光と日中の明るさ。いちばんのおすすめ |
| 南・西の窓辺(レースカーテン越し) | ○ 明るさは十分。夏の西日だけは葉焼けに注意 |
| 南・西の窓から1〜1.5m離れた場所 | ○ 直射を避けつつ明るさを確保できる |
| 北側の窓辺 | △ 一日中安定した光だが弱い。育成ライトを足すと良い |
| 部屋の奥・窓のない廊下 | ✕ 光が足りず、成長が止まって水苔も乾かない |
光が足りているかどうかは、新しい胞子葉で判断できます。新しい葉が以前より小さく薄い、だらりと垂れる、数か月新しい葉が出ないなら光不足です。逆に葉が白っぽく色抜けしたり、茶色く焦げたりするなら光が強すぎます。品種ごとの光の好みや窓の向き別の詳しい話はビカクシダの置き場所と日照にまとめています。
北側の部屋なら植物育成ライト
北向きの部屋しかない、窓から離れた壁に飾りたいという場合は、植物育成ライトを使えば問題なく育てられます。LEDの育成ライトを株から20〜35cmほど離し、タイマーで1日10〜12時間点けるのが目安です。冬は日照時間が短いので、窓際の株にも夕方から数時間足すと成長が止まりにくくなります。ライトの選び方や距離の詳しい合わせ方はビカクシダの育成ライトで解説しています。
板付けを壁に掛けるときの注意
板付けのビカクシダを壁に飾る場合は、ピクチャーレールやフックで壁から少し浮かせて掛けると、板の裏に空気が通って水苔が乾きやすくなります。水やりのあとは十分に水を切ってから戻さないと、壁や床に水が垂れ、板の裏がいつまでも湿ったままになります。壁掛けと鉢植えのどちらが室内向きかは板付けと鉢植えの比較を参考にしてください。
室内での水やり
室内のビカクシダは、屋外より乾きがゆっくりです。日数で決めて水をやると、乾ききらないうちに次の水が入り、根腐れの原因になります。基本は水苔が乾いて、株を持ち上げて軽くなってから、たっぷりです。
| 室内の環境 | 水やりの目安 |
|---|---|
| 春〜夏、冷房をよく使う部屋 | 7〜10日に1回 |
| 春〜夏、冷房なしで湿度の高い部屋 | 10〜14日に1回 |
| 秋〜冬、暖房をつけている部屋 | 10〜14日に1回 |
| 秋〜冬、暖房なしの涼しい部屋 | 14〜21日に1回 |
板付けはバケツや浴室で水に10〜20分沈めるソーキング(ドブ漬け)、鉢植えは鉢底から流れ出るまで与えます。冬は暖かい日の午前中に、汲み置きして室温に戻した水を使ってください。株の重さで乾き具合を判断するコツはビカクシダの水やり頻度で詳しく説明しています。水をやりすぎたときのサインは水のやりすぎのサインを確認してください。
エアコン・暖房・サーキュレーター
日本の室内で特に気をつけたいのが、冷暖房です。
エアコンの風を直接当てない。 冷房でも暖房でも、エアコンの風が当たる場所は湿度が20〜30%台まで下がり、胞子葉の先から乾いて茶色くなります。吹き出し口の正面や真下は避け、風の通り道から外れた明るい場所を選んでください。石油ファンヒーターやオイルヒーターの前も同じです。
冬の暖房中は湿度が落ちる。 暖房をつけた部屋は湿度30〜40%になることが珍しくありません。ビカクシダが好むのは50〜70%です。対策は次のとおりです。
- 朝のうちに胞子葉に軽く霧吹きで葉水をする(夜の葉水は窓際で冷えるので避ける)
- 加湿器を同じ部屋で使う。株に直接ミストを当てる必要はない
- 観葉植物をまとめて置き、株の周りの湿度を上げる
- 株のそばに温湿度計を置いて、実際の数字を確認する
湿度不足による葉先の傷みは葉先が茶色くなる原因で詳しく扱っています。
サーキュレーターで空気を動かす。 空気が止まった室内では、水苔が乾きにくく、カビや害虫が増えやすくなります。サーキュレーターを弱風にして、株ではなく壁や天井に向け、部屋の空気全体をゆっくり回してください。冬は天井付近に溜まった暖気を下ろす効果もあり、窓際の冷え込みもいくらか和らぎます。強い風を株に当て続けると、かえって乾燥しすぎるので注意します。
冬の夜の窓際は冷える。 昼は特等席の窓際も、暖房を切った明け方には家の中でいちばん寒い場所になります。寒さに弱い品種は夜だけ窓から1mほど離すか、カーテンの室内側に来るようにしてください。窓際で冷えて葉が黒くなった場合の見分け方はビカクシダの寒さ対策と冷害にあります。
室内で起きやすいトラブル
| 症状 | 室内で考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 何か月も新しい葉が出ない | 光不足 | 窓に近づけるか育成ライトを足す |
| 葉先が茶色くパリパリ | 冷暖房による乾燥、水切れ | 葉水・加湿、水やり間隔を見直す |
| 葉がしおれ、水苔がいつまでも湿っている | 水のやりすぎ、風通し不足 | しっかり乾かし、サーキュレーターで空気を動かす |
| 葉に細かい白い斑点、クモの巣状の糸 | ハダニ(乾燥した室内で増える) | ハダニの対策へ |
| 葉脈沿いに茶色い小さな粒 | カイガラムシ | カイガラムシの駆除へ |
| 葉が白っぽく色あせる | 窓越しの強い直射 | 窓から少し離すかレースカーテンを使う |
| 株元が黒くぶよぶよ、酸っぱい匂い | 根腐れ | 根腐れの復活手順へ |
室内は天敵がいないため、ハダニやカイガラムシが一度入ると増えやすい環境です。新しく買った株や、秋に屋外から取り込んだ株は、しばらく他の株から離して様子を見てください。害虫全般の見分け方はビカクシダの害虫にまとめています。
屋外から室内に取り込むときは
夏をベランダで過ごした株を秋に取り込む場合は、次の3点を押さえてください。
- 夜の最低気温で時期を決める。 品種がわからなければ最低気温15℃前後が目安です。品種別の温度はビカクシダの冬越しを参照してください。
- 取り込む前に害虫を落とす。 株ごと水に20分ほど沈め、葉の裏と貯水葉の隙間を確認してから室内に入れます。
- 最初の1か月の黄変は慣れの過程。 屋外より暗い室内に移ると、古い葉が1〜2枚黄色くなることがあります。新しい葉が健康なら心配いりません。できるだけ明るい窓際に置いてください。
肥料と長く育てるコツ
室内の株も、春から初秋の生育期には薄めた液肥(ハイポネックス原液などをラベルの観葉植物向けよりさらに薄めたもの)を2〜4週に1回、または緩効性のマグァンプKを少量与えると、葉が大きく育ちます。成長が止まる冬は肥料をやめてください。詳しくはビカクシダの肥料にあります。季節ごとの作業をまとめて確認したい人はビカクシダの年間管理カレンダーが便利です。
室内で育てやすい品種を選ぶなら、丈夫なビフルカツム(ネザーランドを含む)や、乾燥と光に強いビーチーが定番です。品種ごとの特徴はビカクシダの人気品種で比較しています。
室内管理でいちばん迷うのは水やりのタイミングです。「前回いつやったか」を株ごとに記録しておくと、自分の部屋での季節ごとのペースが見えてきます。ビカクログでは株ごとのお世話記録に水やりの日を残せます。
