ビカクシダの黒い斑点は、まず「乾いているか、湿っているか」で見分けます。 乾いて紙のように硬い黒褐色は、ほとんどが正常な老化か寒さの跡で、急ぐ必要はありません。湿って柔らかく、日に日に広がる黒い斑点は、カビの病気か根腐れで、今日のうちに対処が必要です。

ビカクシダ(コウモリラン)の葉に黒い点や斑点を見つけると不安になりますが、実はその多くは病気ではありません。胞子葉の裏の胞子、古い貯水葉の褐変、寒い夜のあとの冷害、カイガラムシ。原因によって正しい対処が正反対になることもあるので、殺菌剤やハサミを手に取る前に、まず何が起きているのかを切り分けてください。

黒い斑点の見分け方早見表

見た目考えられる原因緊急度
胞子葉の先端の裏に、ビロード状の茶色〜黒褐色の面胞子のう(正常)🟢 放置
古い貯水葉が乾いて紙のように黒褐色貯水葉の老化(正常)🟢 放置
寒い夜の数日後、複数の葉に同時に黒ずみや透け低温障害(冷害)・霜🟡 原因を取り除く
こするとポロッと取れる茶色〜黒の小さな粒カイガラムシ🟡 駆除
黄色い縁取りのある茶色〜黒の斑点葉の斑点病(カビ・細菌)🟡 様子を見て対処
湿って柔らかく広がる黒い斑点、貯水葉や株元から始まるリゾクトニアなどのカビ🔴 すぐ対処
株元が黒くぶよぶよ、酸っぱい匂い根腐れ🔴 すぐ対処

迷ったら、清潔な指で軽く押してみてください。革のように硬くパリッとしているなら安心してよく、ぬるっとする、指が沈むなら病気か腐敗です。

正常なもの:葉裏の胞子と星状毛

胞子葉の裏の胞子のう

ある程度育ったビカクシダは、胞子葉の先端の裏側に胞子のう(胞子の入った小さな袋)の集まりをつけます。最初は緑がかった薄い茶色で、熟すと濃い茶色から黒褐色のビロードのような面になり、触ると細かい粉(胞子)がつきます。これを黒い斑点やカビと勘違いする人が多いのですが、株が成熟した証拠で、健康そのものです。

見分けるポイントは3つです。

  • 出る場所が胞子葉の先端付近の裏側に限られている
  • 表面が乾いていてビロード状。押しても柔らかくならない
  • 形が葉先に沿って広がり、ほかの葉に飛び火しない

品種によって出方が違い、スパーバムやグランデは胞子葉の分かれ目に大きな胞子のうの面をつけます。取り除く必要はありません。こすり落とすと葉の表面を傷めます。胞子から株を増やしたい人は胞子からの育て方を参考にしてください。

星状毛が擦れた跡

ビカクシダの葉の表面は、星状毛(せいじょうもう)という細かい毛に覆われています。白や銀色の毛なので黒い斑点にはなりませんが、手で触ったり葉を拭いたりした部分は毛が取れて、そこだけ濃い緑色のまだら模様に見えることがあります。これは病気ではなく、ただ毛がなくなった跡です。一度取れた星状毛は戻らないので、葉は拭かないでください。白い粉と病気の見分け方はビカクシダの白い粉は星状毛かカビかで詳しく扱っています。

貯水葉の黒褐色

株元の丸い貯水葉は、育つにつれて下から順に茶色〜黒褐色になり、乾いて硬くなります。これは自然な老化で、根茎を守り水分を蓄える役目は続いています。乾いているなら放置してください。詳しくは貯水葉が茶色くなる原因にあります。

寒さによる黒い斑点(冷害)

10月下旬から冬にかけて黒い斑点が出たなら、まず寒さを疑ってください。最低気温が下がり始めるこの時期は、カビよりも冷害のほうがずっと多いです。

冷害の黒い斑点には特徴があります。

  • 寒い夜の2〜4日後に現れる
  • 何枚かの葉に同時に出る。特に窓側や外側の葉
  • 最初は葉がくすんだ灰緑色になり、水に濡れたように透け、やがて黒くなる

リドレイやグランデ、コロナリウムなど熱帯系の品種は、霜が降りない10℃前後でもこの症状が出ます。一方、カビの病気は一か所から始まり、日を追って周りに広がっていくので、出方の違いで見分けられます。

冷害だった場合は、柔らかくなった葉だけを切り、乾いた黒い部分は春まで残して構いません。夜は窓から離し、取り込みがまだなら今すぐ室内へ入れてください。株が生きているかどうかの判定と回復のさせ方はビカクシダの寒さ対策と冷害、品種別の耐寒温度はビカクシダの冬越しにまとめています。

危険な黒い斑点:リゾクトニアなどのカビ

ビカクシダで最も注意すべき黒い斑点は、リゾクトニアなどのカビ(糸状菌)によるものです。カビは暖かさと湿り気が続く環境で増えるため、日本では梅雨から夏、そして暖房で暖かいのに風が動かない冬の室内で起こりやすくなります。

見分け方

  • 黒または黒に近い茶色で、湿って柔らかい、油じみたような斑点
  • 多くは貯水葉や株元から始まり、緑の胞子葉へ広がる
  • 変化が速い。先週は小さな点だったものが、今週は大きくなって数も増えている
  • 進行すると葉全体が黒くなってしおれ、株元が腐り始める

最初は貯水葉の老化や水のやりすぎと区別がつきにくいのですが、決め手は広がるかどうかです。老化は健康な緑の葉に飛び火しませんが、カビは広がります。

対処の手順

カビは水分がなければ生きられません。対処の中心は、薬より先に乾かすことです。

  1. 水やりと葉水を止める。 株を乾かすのが最初の仕事です。
  2. 暖かく風の通る場所へ移す。 サーキュレーターの弱風を近くで回すのが効果的です。この株の周りだけは、湿度が下がるほうが良い状態です。
  3. ひどく傷んだ胞子葉を切る。 アルコールで消毒した刃で、腐った胞子葉を健康な部分まで切り取ります。貯水葉は、黒くなっていても切りません。 根茎を守っている葉で、切ると傷口から菌が入ります。
  4. 殺菌剤を散布する。 園芸店で売られている殺菌剤のうち、ラベルに観葉植物や草花への適用があるものを選び、株全体に散布します。新しい斑点が出なくなるまで、7〜10日おきに繰り返します。使用方法と回数はラベルに従ってください。
  5. ほかの株から離す。 胞子が飛んでうつることがあるので、回復するまで隔離します。
  6. 数日ではなく数週間乾かし気味に。 新しい斑点が出なくなり、水苔がしっかり乾いてから、少しずつ水やりを再開します。

株元までぶよぶよになっている場合は、カビが根茎に入って根腐れになっています。その場合は根腐れの復活手順で、板から外して切り戻す処置が必要です。

そのほかの原因

こすると取れる茶色〜黒の粒は病気ではなく、カイガラムシです。葉脈沿いや葉の裏に、硬い殻をかぶった小さな粒がついています。爪や綿棒でこすって落ちるなら害虫なので、カイガラムシの駆除を参照してください。

黄色い縁取りのある茶色い斑点は、比較的軽い葉の斑点病のことが多く、葉の上に水が長く残ることがきっかけになります。上から水をかけるのを控え、風通しを良くし、ひどい部分の葉先だけ切り取ります。

株元が黒くぶよぶよで、酸っぱい匂いがするなら、斑点ではなく根腐れが原因です。水苔が何日も乾かない、胞子葉が水切れでもないのに垂れるといったサインも一緒に出ます。

黒い斑点を防ぐには

カビの病気も根腐れも、元をたどれば乾く暇のない湿り気が原因です。

  • 水やりは「たっぷり与えて、早く乾かす」。 ソーキングのあとはよく水を切り、水苔が数日で乾く環境をつくります。季節ごとの目安はビカクシダの水やり頻度にあります。
  • 成長点に水を溜めない。 水やりや葉水のあと、株を傾けて中心の水を切ります。
  • 空気を動かす。 サーキュレーターの弱風や窓を開けての換気は、どんな薬よりもカビの予防になります。
  • 冬は夜の窓際を避ける。 冷えと湿り気が重なると、冷害とカビの両方を招きます。夜の葉水もやめてください。
  • 新しい株はしばらく隔離。 買ってきた株は2週間ほど他の株と離して様子を見ます。

黒い斑点が出た日付と場所を写真で残しておくと、広がっているかどうかが一目でわかり、冷害かカビかの判断がしやすくなります。ビカクログでは株ごとのお世話記録に写真とメモを残せます。