ビカクシダ(コウモリラン)の最初の1株には、ビフルカツム(小型の選抜品種ネザーランドを含む)かビーチーがおすすめです。 どちらも寒さと乾燥に強く、最低5℃前後まで耐え、子株も出しやすい丈夫な品種です。リドレイやコロナリウムのような熱帯アジア系は見た目の魅力が大きい反面、冬も15℃以上と高い湿度が必要なので、育て方に慣れてから選ぶと失敗が少なくなります。
ビカクシダの原種は世界に18種ほどあり、そこに選抜株や交配種が加わるため、売り場には多くの名前が並びます。この記事では、日本でよく流通している人気品種を難易度別に紹介し、原種と交配種の違い、買える場所、元気な株の選び方をまとめます。各品種の詳しいデータは品種インデックスからご覧ください。
初心者向けの人気品種
まずは、日本の一般的な室内環境で育てやすく、入手もしやすい品種です。
| 品種 | 特徴 | 冬越しの目安 | 子株 |
|---|---|---|---|
| ビフルカツム | もっとも流通量の多い基本の品種。丈夫で成長も早い | 5℃ | よく出す |
| ネザーランド | ビフルカツムの小型の選抜品種。卓上や小さな板付けに | 5℃ | よく出す |
| ビーチー | 細い葉がまっすぐ立ち上がり、白い星状毛で銀色に見える | 5℃(寒さに最も強い部類) | よく出す |
| ヒリー | 幅広で濃い緑の葉。毛が少なくつややかな印象 | 5℃ | よく出す |
| ウィリンキー | 長く垂れ下がる銀色の葉。名前付きの選抜株が多い | 5℃(できれば8℃以上) | よく出す |
| アルシコルネ | 小型で、毛の少ない明るい緑色の葉 | 10℃ | ときどき出す |
ビフルカツムとネザーランドは、ホームセンターでも手に入る「コウモリラン」の代表です。ネザーランドは種としてはビフルカツムと同じで、違いは小ぶりにまとまることと成長がゆっくりなことです。
ビーチーは、乾燥と強めの光に強いオーストラリア原産の種類です。白い星状毛に覆われた細い葉が上に向かって伸びる姿が人気で、明るい場所で育てるほど銀色が映えます。詳しくはビーチーの育て方と品種の見分け方をご覧ください。
ウィリンキーは、銀色の長い葉が流れ落ちるように垂れる姿が魅力です。名前付きの選抜株が多く、なかには交配種がウィリンキーとして売られていることもあります。見分け方はウィリンキーの育て方で詳しく解説しています。品種インデックスでは中級に分類していますが、乾かし気味の水やりさえ守れば育てやすい部類です。
ヒリーとアルシコルネは、ビフルカツムに慣れた人の2株目として人気です。アルシコルネはアフリカ系で、寒さにはオセアニア系よりやや弱く、冬は10℃以上を保ちます。
慣れてから挑戦したい品種
次の品種は、見た目のインパクトが大きく人気も高い一方で、温度・湿度・水やりの管理に慣れが必要です。
| 品種 | 特徴 | 冬越しの目安 | 子株 |
|---|---|---|---|
| スパーバム | 大きな貯水葉と幅広く垂れる胞子葉。大株になる | 5℃(できれば8℃以上) | 出さない(単芽性) |
| グランデ | スパーバムに似た大型種。熱帯性で寒さに弱い | 15℃ | 出さない(単芽性) |
| リドレイ | 丸い貯水葉と、上向きに細かく分かれる胞子葉。高い湿度を好む | 15℃ | 出さない(単芽性) |
| コロナリウム | 胞子葉が長く垂れ下がる熱帯アジアの大型種 | 15℃ | 出さない(単芽性) |
| ワンダエ | 貯水葉の縁が大きく波打つ、ニューギニア原産の大型種 | 15℃ | 出さない(単芽性) |
これらに共通する注意点は2つあります。
- 単芽性で子株を出さない。 成長点が1つしかないので、成長点を傷めたり腐らせたりすると、その株は回復できません。増やすには胞子培養しかありません。
- 熱帯アジア系は冬の温度が15℃以上必要。 リドレイ・グランデ・コロナリウム・ワンダエは、室内でも窓際の夜間冷えで傷みます。冬越しの考え方はビカクシダの冬越しにまとめています。
スパーバムはオーストラリア原産で寒さには比較的強いものの、大株になるまで年数がかかり、成長点の管理に気を使う品種です。スパーバムの育て方とリドレイの育て方では、それぞれの水やりと置き場所を詳しく解説しています。
原種・選抜品種・交配種の違い
売り場でビカクシダの名札を見るときは、次の3つの違いを知っておくと混乱しません。
- 原種: 野生に自生する種そのもの。ビフルカツム、ビーチー、リドレイなど。
- 選抜品種(選抜株): 原種の中から、形や大きさが優れた個体を選んで増やしたもの。ネザーランドや、ウィリンキー・ビーチーの名前付きの株の多くがこれにあたり、種としては原種と同じです。
- 交配種: 2つの種を掛け合わせて作った株。ホワイトホークやOMGのように、ウィリンキーなどを親に持つ交配種が流通しています。
ビカクシダには正式に登録された園芸品種がほとんどなく、同じ名前で違う株が売られていることもあれば、同じ株が別の名前で売られていることもあります。交配種が劣るわけではなく、丈夫で育てやすいものもありますが、名前だけでは親が分からないときは、購入時に親の組み合わせを確認すると、水やりや冬越しの目安を立てやすくなります。
ビカクシダはどこで買える?
入手先によって、手に入りやすい品種が変わります。
- ホームセンター・園芸店・インテリアショップ: ビフルカツムやネザーランドなど、定番品種の小さな鉢植えや苔玉、板付けが中心です。
- ビカクシダを扱う専門の園芸店: ビーチーやウィリンキーの選抜株、アルシコルネ、リドレイなど、品種の幅が広がります。育て方の相談ができるのも利点です。
- 植物の即売イベント: 生産者や愛好家が育てた株を、実物を見て選べます。珍しい選抜株や交配種に出会えることもあります。
- ネット通販・生産者の直販: 品種の選択肢は最も広いですが、届くまで実物を確認できません。商品写真が実物かどうか、成長点や貯水葉の状態が分かる写真があるかを確認しましょう。
希少な品種ほど名前と実物が一致しないことがあるので、初めのうちは実物を見て買える場所で、店の人に品種名の由来を聞きながら選ぶのが安心です。
元気な株の選び方:4つのチェックポイント
どの品種を選ぶにしても、購入時に次の4点を確認してください。
| チェック項目 | 良い株 | 避けたい株 |
|---|---|---|
| 成長点 | 株の中心が緑色で張りがあり、新しい葉の芽が見える | 中心が黒い・茶色く柔らかい・へこんでいる |
| 貯水葉 | 株元をしっかり覆っている。茶色くなった古い貯水葉が重なっているのは正常 | 黒く柔らかい、酸っぱい匂いがする |
| 根・株元 | 株を軽く揺すってもぐらつかない | ぐらぐら動く、鉢の土がいつまでも湿って重い |
| 害虫 | 葉裏や貯水葉のすき間がきれい | 茶色い粒、白い綿状の塊、葉裏のかすれた斑点 |
成長点が最も大事です。 新しい葉は株の中心の成長点からしか出てこないため、ここが傷んでいる株は葉がどれだけ立派でも育ちません。見分け方はビカクシダの成長点で詳しく解説しています。
貯水葉が茶色いのは、多くの場合ただの老化です。茶色く乾いて硬い貯水葉は正常ですが、黒く柔らかい場合は根腐れの可能性があります。葉裏に茶色い粒や白い綿のようなものが付いていたら、カイガラムシなどの害虫です。持ち帰ると他の株に広がるので、購入は見送りましょう。
まとめ
最初の1株には、ビフルカツム(ネザーランド)かビーチー。慣れたらヒリー、アルシコルネ、ウィリンキーへ進み、リドレイ・コロナリウム・ワンダエなど熱帯アジア系は、冬に15℃以上を保てる環境を整えてから選びましょう。どの品種でも、購入時は成長点・貯水葉・株元・害虫の4点を確認すること。買ってきた株の水やりはビカクシダの水やり頻度から始めてください。
