ビカクシダ(コウモリラン)の成長点は、硬く締まっていれば茶色でも生きています。黒く濡れたようになり、押して崩れるなら死んでいます。 判定はこの一点です。葉が何枚枯れたかは関係ありません。

成長点は、ビカクシダの体の中で唯一、新しい葉と根を作れる組織です。貯水葉も胞子葉も根も、すべてここから出ます。だからこの植物は葉を一枚残らず失っても成長点さえ無事なら数か月で元に戻り、逆にどれだけ葉が青々としていても成長点が崩れていれば終わりです。ビカクシダを長く育てている人が株を見るとき、葉ではなく真っ先に成長点を確かめるのはそのためです。

この記事では、成長点がどこにあるのか、板付けでどちらを上にするのか、茶色と黒のどちらが危険なのか、埋もれた・見つからない・2つある・傷つけた、それぞれの場合に何をすべきかをまとめます。

ビカクシダの成長点はどこにあるか

成長点は貯水葉の中心、いちばん新しい貯水葉が出てきた付け根にあります。板付けなら板に接している側、鉢植えなら水苔の表面の近くです。

見た目は、星状毛(白〜茶色の細かい毛)に覆われた、小さく盛り上がったドーム状の組織です。大人の株でも指先ほどの大きさしかなく、健康なときは薄緑〜ベージュ〜明るい茶色をしています。うっすら白い毛が密集して見えるのは正常で、白い粉の正体で説明している星状毛です。

見つけ方は簡単で、いちばん新しい葉の付け根をたどるだけです。貯水葉と胞子葉はこの一点から交互に展開するので、最新の貯水葉が広がり始めた中心を見れば必ず行き着きます。古い貯水葉が何層も重なって隠している場合は、剥がさずにそっと持ち上げて覗いてください。

成長点の向きと上下:板付けで守るべき一点

板付けや植え替えで迷うのが「どちらを上にするか」ですが、答えは一つで、成長点が上、根が下です。

成長点から出た貯水葉は上に向かって広がり、胞子葉は下に垂れます。成長点を横や下に向けて付けると、貯水葉が板を包めず、胞子葉が上に向かって曲がり、株の形が崩れたまま何年も直りません。板に押し当てるときは、成長点が水苔の表面より少し上に出る位置で固定してください。埋めてはいけません。

もう一つ知っておくべきなのは、成長点は年々上に登るということです。古い貯水葉の層が下に溜まるので、成長点は板の上のほうへ、そして前へせり出していきます。数年経って成長点が板の上端に届きそうなら、それが植え替えの合図です。手順は板付けの方法にあります。

リドレイのように貯水葉が球状に丸まる品種は、成長点がほぼ真正面を向きます。これも「上」の一種で、成長点の面が板と平行に前を向くように付ければ間違いありません。

成長点が茶色い・黒い:生きているかの判定表

色で判断しないでください。感触で判断します。 成長点はもともと星状毛のせいで茶色っぽく見え、冬の休眠中や環境が変わった直後はさらに濃い茶色になります。茶色いだけで慌てて剥がしたり、殺菌剤を塗ったりする必要はありません。

見た目触った感触判定やること
薄緑〜ベージュ〜明るい茶色、毛が密硬く締まっている正常何もしない
濃い茶色、乾いている硬い、押しても崩れない正常(休眠・環境変化)水やりを控えめにして待つ
表面だけ黒い、乾いている硬い、中は締まっている表面の古傷触らずに新葉が出るか2〜3か月観察
黒く濡れたように透けるブヨブヨ、押すと崩れる根腐れが成長点に到達緊急対処(後述)
黒く、すっぱい匂い柔らかく、周りの貯水葉も黒い手遅れの可能性大子株の有無を確認

冬に濃い茶色になって動かなくなるのは休眠です。ビカクシダは最低気温が下がると成長点の活動を止め、春まで新しい葉を出しません。この時期に「枯れた」と判断して水を増やすのが、冬に株を失う典型的なパターンです。取り込みの時期と温度の目安は品種別の耐寒性にまとめてあります。

黒くて硬い場合は、過去に何かで傷んだ外側の組織が乾いて残っているだけで、内側の細胞は生きていることがよくあります。この状態から新しい貯水葉が出てくることは珍しくないので、剥がさないでください。

黒くて柔らかい場合は根腐れが成長点まで達しています。すぐに水やりを止め、風通しの良い場所に移し、黒く崩れた組織だけを清潔なピンセットで取り除いてください。貯水葉は茶色く乾いたものも含めて剥がしてはいけません。成長点の中心にわずかでも硬い部分が残っていれば、そこから復活する可能性があります。

成長点が埋もれる・見つからない・2つある

埋もれる。 貯水葉に覆われているのは正常です。成長点は本来、貯水葉の層に守られています。問題になるのは水苔に埋もれている場合で、板付けのときに成長点を水苔の中に沈めてしまうと、光が届かず常に湿っているため、成長が止まるか腐ります。成長点の上に乗っている水苔をピンセットでそっと取り除き、表面に出してください。掘り返す必要はありません。成長点の面が空気に触れていれば十分です。

見つからない・ない。 ほとんどの場合、いちばん新しい貯水葉の裏に隠れています。最新の貯水葉が板に接している付け根を持ち上げて覗いてください。子株の成長点は米粒ほどの大きさしかないので、見落としやすいです。どこにも硬い盛り上がりがなく、中心が平らに黒ずんで崩れているなら、その成長点は失われています。その場合は根茎の他の場所に子株が出ていないかを確認します。

2つある。 品種によって意味が違います。ビフルカツム・ネザーランド・ビーチー・ウィリンキー・アルシコルネなど子株を出す品種では、根茎の途中に新しい成長点が現れるのは正常で、それが子株です。そのまま育てて群生株にしてもよいし、子株が自分の貯水葉と根を持ってから外して増やすこともできます。手順は株分け・子株の外し方にあります。一方、リドレイ・グランデ・スパーバム・ホルタミー・ワンダエのように子株をほとんど出さない品種で成長点が2つ見えるなら、もともと双頭で育った株か、成長点が一度傷んで分岐した株です。無理に分けず、そのまま育ててください。

成長点を傷つけた時にできること

板付けの針金や、貯水葉を持ち上げた指、落下の衝撃で成長点を傷つけてしまうことがあります。

まず、傷の深さで結果が決まります。 表面の毛や外側の組織が削れただけなら、乾かしておけば次の葉は出ます。多少いびつな葉が出ることはありますが、その次の葉から元に戻ります。中心のドームそのものが潰れたり切れたりした場合は、その成長点から新しい葉が出る可能性は低くなります。

やることは3つだけです。傷口に水をかけない(水やりは株の根元側から、成長点を避けて)、風通しを確保して乾かす、そして触らない。傷口に園芸用の癒合剤や殺菌剤を塗る人もいますが、成長点は毛に覆われていて塗りにくく、薬剤で細胞を傷めるほうが怖いので、乾かすだけで十分です。

「首折れ」と呼ばれる、展開途中の新しい貯水葉や胞子葉が付け根で折れる事故は、成長点そのものが傷んだわけではありません。折れた葉の根元をそのまま残しておけば、次の葉は問題なく出てきます。

成長点が生きていれば復活する:手順

葉が全部落ちた、貯水葉が真っ黒になった、というビカクシダ(コウモリラン)でも、成長点が硬く残っていれば復活します。やることは少なく、やってはいけないことのほうが多いです。

  1. 黒く崩れた組織だけを取り除く。 貯水葉は乾いた茶色のものも含めてすべて残します。剥がすと成長点がむき出しになり、乾燥で止めを刺すことになります。
  2. 水やりを一段減らす。 根が傷んでいる株は水を吸えません。板や鉢の重さで判断し、完全に軽くなってから与えます。
  3. 明るい日陰に置く。 直射日光は避け、風が通る場所にします。
  4. 肥料は与えない。 吸えない肥料分が水苔に残り、根腐れを悪化させます。新しい貯水葉が展開してから再開します。
  5. 2〜3か月待つ。 新しい貯水葉が出れば成功です。冬なら春まで待ちます。

新しい葉は必ず貯水葉から出ます。最初の一枚は小さく、形も整っていないことが多いですが、それで問題ありません。二枚目からは元の大きさに戻っていきます。

いまが9月なら、屋外株を室内に取り込む前の点検として成長点を一度確認しておいてください。夏の間に水苔が成長点の上に流れてきて埋もれていたり、貯水葉の裏にカイガラムシが潜んでいたりするのを、取り込みの前に片付けておくと、冬の事故がかなり減ります。

葉の黄変から成長点の判定までの流れは葉が黄色くなる原因、貯水葉が茶色や黒に変わる意味は貯水葉が茶色くなる理由で詳しく説明しています。成長点が根茎の先端にあり、貯水葉と胞子葉がそこから交互に出るという基本構造は、ウィスコンシン大学園芸普及部の Platycerium bifurcatum 解説(英語)に図解があります。